成長の秘策ゴチになります!

HOST

株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長

白石 徳生氏

株式会社サイサン
代表取締役社長

川本 武彦氏

GUEST

Guest Profile

川本 武彦(かわもと・たけひこ)

1964年生まれ。埼玉県出身。玉川大学卒業後、矢崎総業株式会社入社。95年株式会社サイサン入社。2001年より代表取締役社長に就任。

第31回お客様第一主義、”凡事徹底”を基本にチャレンジを忘れない

1.LPガス、都市ガスから電気の小売りにも参入

まず御社の歴史から教えて頂けますか。

1945年、創業者である私の祖父、川本二郎が勤務先の日本酸素から独立し、46年に「埼玉酸素販売所」を開業したのがはじまりです。

その頃酸素は何に使われていたのですか。

当時は鉄道の車両基地などで”溶接用”に使われていたようです。その後、地元で使われる一般高圧ガス、病院で使われる医療用ガスの販売会社として歩んできました。そして、営業エリアも埼玉だけでなく静岡などまで地域を広げ、70年には社名を株式会社サイサンに変更しました。

川本さんはいつ社長に?

2001年1月1日、36歳で社長に就任し、私の父、川本宜彦が会長に就きました。03年にグループ会社を含めた共通ブランドとして「ガスワン」ブランドを立ち上げ、07年には富士山のミネラル天然水の宅配事業「ウォーターワン」を開始しました。11年には東日本大震災を機に日本のエネルギー政策は大きく見直され、弊社は12年よりメガソーラー事業に着手したほか、特定規模電気業者(PPS)として電力販売によるノウハウの蓄積を図り、成長戦略の布石と総合エネルギー事業者となるべく準備を進めて参りました。そして迎えた16年4月の電力全面自由化では、「エネワンでんき」ブランドとして、北海道・東北・東京・中部・九州の5電力管内において小売販売を開始し、お陰様で8万件を超えるお客様にご契約頂くことができました。また、本年17年4月1日より都市ガスが自由化され、一般家庭においても都市ガス会社を自由に選べるようになりました。弊社は都市ガス自由化を新たなビジネスチャンスと捉え、”電力・ガス自由化トップランナー!”のスローガンのもと、エネルギー自由化の積極果敢に挑戦しています。

2.北海道から兵庫までM&Aでグループ化

御社の場合はいろいろな地域の会社をM&Aをされていますよね。

そうですね。M&Aでグループ化したLPガスの会社は北海道から兵庫までありますね。

どういうきっかけでM&Aを行うようになったんですか。

LPガス事業者は、いまは2万社ほどですが、もともとは5万社あったんです。弊社はLPガスの卸もしているので、取引のある販売店様が事業を閉じるときに継承させていただくことは父の代からありました。これもある種のM&Aですね。

最近は大きな会社のM&Aをされています。

上場企業であればM&Aのとき、短期間に利益を出すため大規模なリストラを行い、事業を切売りすることもありますが、弊社の場合はオーナー企業の良さでもあると思いますが、利益だけを追求するスタンスではありません。旧オーナーとの関係もうまく保ち、買収先のお客さまや社員を大事にしながら仲間として受け入れています。例えば熱海ガスを買収したときも、プロパーの役員を社長に任命しました。すると、サイサンから社長が来ると思っていた熱海ガスの社員は驚き「プロパーでも社長になれるんだ」と社員の士気も上がったんですね。翌年には”社員を大切にする会社”であることが高く評価され、それを耳にした常盤共同ガスの親会社から「社員を大切にしてくれるならウチも買ってほしい」ということで福島県の常盤共同ガスも買収することになったんです。

それで次々に案件が持ち込まれるんですね。御社はどんどん事業を拡大しているイメージがあります。

海外展開が積極的だとよく言われますね。LPガス事業で本格的に海外進出を果たしている日本のガス会社は弊社だけです。モンゴルではナンバーワンのガス会社になり、ベトナムでも国営系のガス会社に次ぐシェアを持っています。海外ではまだまだ薪や石炭を使っている人が多く、ガスの成長度合いは凄いんですよ。モンゴルのように広い国では配管を工事するのも容易ではないので、LPガスのほうがインフラとして断然便利なんです。それに薪や石炭は二酸化炭素の排出量が多く、発展途上国ではLPガスを推奨している国が多いのも現実です。また、ベトナムなどでは、ベトナム語で「日本品質」と塗装されたLPガスボンベがものすごく売れているんです。現地の人にはこの日本品質が付加価値となり、差別化にもなっているんですよ。

3.兄は弟の面倒を見ろ 弟は兄を立てろ

弊社も海外展開しているのですが、人材供給が追いつかないのが悩みですが、その点は?

海外は60歳前後の海外勤務経験者を中途で採用したり、「英語が苦手でもやる気があれば、どうにかなるよ」と社内から若手を抜粋することもあります(笑)。最近は新卒でも海外勤務を希望する社員もいますし、海外青年協力隊などに声をかけ、海外に興味を持つ人材を探したりもしています。また、ベトナムやモンゴルの出身で日本の大学を卒業した社員が、約20名程いますが、祖国の発展に貢献したいという思いが強く、彼らのハングリー精神には目を見張るものがあり、社内の活性化にも繋がっています。彼らには日本で経験を積んでいただき、将来的には祖国に帰って経営者になってもらいたいと思っています。

一見、ガスとは関係ないような新規事業もありますね。

パプリカの生産はびっくりされます(笑)。日本の人口が減少し、エネルギーも縮小していく危機感の中で始めた新規事業の一つです。農業はガスと関係なさそうに思われますが、実はビニールハウスで光合成を早めるのに炭酸ガスを使用するほか、暖房用のボイラーにLPガスも使用しています。アグリ事業へ進出するきっかけとなったのは、11年の東日本大シンシアの際、宮城県のお客さまのガラスハウスが津波に流されてしまい、弊社が支援をしたのが始まりです。国内に出回っているパプリカの約9割は外国からの輸入が中心で、国産は1割程度しかありません。弊社の植物工場で栽培した新鮮なパプリカを食べていただくと、皆さん瑞々しさや肉厚さにびっくりされますね。

ご兄弟でうまく会社を経営されていますが、兄弟円満の秘訣は?

弟は副社長ですが、9歳離れていますから、昔からケンカにはならないんですね。父は脳梗塞で5年前に急逝したのですが、亡くなる少し前にたまたま3人が会社で顔を合わせ、「いつも行っていることだが、兄は弟の面倒を見ろ、弟は兄を立てろ。今のままやってくれれば何も心配ない」と言ったんです。今思うと遺言のようなものだったのかなと思いますね。

川本さんが経営の上で大切にされていることは?

”お客様第一主義”と、「当たり前のことを徹底してやる」という”凡事徹底”が経営の基本です。それとチャレンジしたい気持ちは常にあります。これからもチャレンジを忘れずにやっていきたいですね。

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